星の数はお気に入り度(5段階)
- カイロ ★
この都市には受け入れる準備ができる前に人が集まりすぎたような感じだ。
大量の古い車がすさまじいマナーで縦横無尽に走り回って、油断していると車が服をかすめてゆく。砂っぽさと排気ガスの臭さとで、空気は最悪。とてもここには住む気にならない、という街だった。一刻も早く抜け出したい街として、飛行機に乗る前後の一泊以上、滞在しなかった。
朝塵のカイロ
地域としてはタフリール近辺、オールドカイロ、イスラム地区あたりをまわった。
見る価値があるのは、カイロ考古博物館。展示が多すぎて途中食傷すること請け合いだが、ツタンカーメン関連の展示はやはり質も量も半端ではなく、感激させられる。当時の王がどういう権威を持った人だったのかを知った気がする。あとは、ミイラ(一室のために70£もする)部屋も見て損はないだろう。復活を信じて残した身体を王家の谷から運ばれ、見物対象にされてしまった彼らの魂は今いずこ。
ナイル
年越しをカイロで迎えた。クルーズかホテルで贅沢カウントダウンでもしてやろうかと思ったが、前者はアンマンからの帰着が夜だったので時間が間に合わないし、後者は値段高すぎ&自分の格好が汚すぎ。なので、カイロタワーに登ってみた。車はどこも大渋滞で時間がかかり、カウントダウンもくそもなく、エレベーターの中で0時を過ぎてしまった。上にあがると、ナイル川に花火があがっていて、各地から歓声が聞こえてきた。野外ロックコンサートの大音響も聞こえてくる。が、ローマのような盛り上がりはなかった。イスラム暦の新年が本番という位置づけだろうか。
カイロタワーよりナイル
- ギザ ★★★
渋滞の激しいカイロ。ギザまで電車で行ってそこでバスかタクシーを捕まえるのが正解。私はミニバスを捕まえた。乗客たちも旅行人ぽい人がどこに行きたいのかは心得ているので助けてくれる。
到着したのはクフ王のピラミッド側。こちらは、ピラミッド内部に入るチケット売り場には近いが、街の中からいきなりピラミッドが見えて、スフィンクスに砂漠という我々が持っているイメージと違う出会いとなる。感動できるのはスフィンクス門。
ピラミッドはあまりに偉大なイメージが先行していて、実物を見たら小さく感じた。が、色々な角度からよくよく眺めるとやはりでかい。かなりガタが来ているが、クフラー王のピラミッドの上の方にはまだ化粧石が残って、滑らかな斜面を見せていて美しい。これが全体を覆っていたとしたら相当な景色だと思う。
クフ王入り口から行くとこんな出会いとなる
ピラミッド内部への入場は1日限定300人。ガイドでは、朝開門の8時前に行って並ぶべしとある。早起きしたものの、宿の朝食が出るのが大変遅かったり(ゆで卵とチーズにお茶だけの極貧朝食を出すのになぜか30分近く!)で到着は8時半。あせったものの、人はあまりおらず、チケット余裕で買える。100£(2000円)もするから皆敬遠しているのか。
ピラミッド内部は通常人が行ける範囲は限られていて特に面白いものではない。ピラミッドパワーが降ってくるかと期待するものの、狭くて湿気ていて気持ち悪いだけだった。でも、そういうスポットがあるようで、手をつないで瞑想している人たちもいる。今後、保護目的で内部に入れなくなるという噂もあるので、まあ一応入ったという経験だけ手に入ってよかった。
ここでは、ピラミッドが3つ並んで見えるビュースポットに行くのがお約束。歩ける距離だが、馬かラクダに乗るのも楽しい。走らせてくれるので私は馬に。値段は事前交渉が必要だが、終わったあとに「ガイド料は別」とか必ず言い始めるので、最初に「これ以上払わないよ」と伝えておいて、おつりはある状態にしておく必要がある。
馬でスフィンクスのところまで行く。これも顔は想像より小さい。が、胴体はバランス悪く長い。顔が削れている。髭はイギリス人が削ぎ落としたという。よくぞそんなひどい、ではなく、怖いことができたなと思う。どー考えても呪われそうなシチュエーションではないか。
ここで、定番(に違いない)スフィンクスとのキス写真と KFC スフィンクス(スフィンクスが見つめる・・・のとリビアで有名になった 。日本人が皆レシートを持って行く、とお店の人が笑っていた)。チキンは日本とあまり味に違いなし。
- アスワン ★★★
スーダンへの玄関口となる街。週に一度の国際フェリーが出発した直後、アフリカ縦断を目指す旅人たちが消えた後の街に私は到着した。物価も安いし、人もなんだかのんびりしている。空が広くて気持ちがよい。この街はエジプトの中で一番好きになれた。ここのハイビスカスティーは最高級らしい、が、現地で買うと安いのでお勧めだ。
この街では帆船のファルーカをチャーターしてのんびりと遺跡などまわるのが楽しい。だが、チャーターとなるので人数が多くないと予算がつらい(といっても1~2人の操縦士つきで一時間20£=400円とかなのだが)。同じ思いを抱く同じ宿の人に誘われて、シェアする。
ファルーカには動力がないため、風がないと本当に進まない。その日は風がほどよくあってよかった。風の吹いてくる方角に進むのは風を流してのジグザク走行になるのでさすがに歩みが遅いが、逆らえるのがすごい。おばあちゃんの知恵万歳だ。動力がないので静か。風の音を聞きながらナイルを滑る。気持ちよい時間。
ファルーカ
アスワンからエジプトの南端、巨大像4体が有名なアブ・ジンベルへは車で3時間ほど。ひたすら砂漠の中を突き進む。ツアーは朝3時半スタート(ウエハースと小さなチーズという貧相な朝食が支給され、それで16時まで何も食べず歩き回ることになるので、最近にない空腹状況になった。このツアーに参加する人は注意)。アブジンベル大神殿は、その像の大きさにも驚くが、砂漠からの日の出やアスワンハイダムによって作られたナセル湖の大きさにも感動する。遠いが来る価値はあるだろう。
光と音のショーもここのものは感動的らしいが、ツアーに乗らないと面倒なのと、神殿の他に見所がないので、時間のある人以外には難しい。周りに光のないこの場所。満点の星空の下にライトアップされた神殿はさぞ美しいだろうが、今回は見送り。
アブ・ジンベル(髭の男)大神殿
イシス神殿
他、湖に浮かぶイシス神殿、アスワンハイダム、ヌビア村などにも行った。どれもそこそこの見ごたえだった。ヌビア村の人々は観光客擦れしていてつまらないながら、話は早く、その独特の色彩の家に招待してハイビスカスティーをくれたりしてくれた。
アスワン。
ナイルが美しく映える街。
なかなかよいではないか!
- ルクソール ★★★★
あまり具体的な中身を知らずに行った街。だが、さすが有名観光地。ここはエジプトで一番の見所だった。
見所はたくさんあって、1日できちんと周るのは不可能、とされていたが、西岸の主要ポイント(ハトシェプスト女王葬祭殿、貴族の墓、メムノンの巨像、王家の谷)をツアーで朝から回り、東岸を夕方から夜にかけて周って一日で終わらせてしまった。
街の中に発掘現場があった。ガイド曰く、先週だかに遺跡が見つかったのだそうな。これだけのものが掘り起こされても、まだまだ発掘途上の街だ。
西岸、ハトシェプスト女王葬祭殿より東を望む
西岸
西岸はファラオたちの残したものを抱いている山々の姿が非常に印象的。
王家の谷にあるおびただしい数の王のお墓。財宝こそそこにはないものの、壁と天井に巡らされたレリーフの時を越えた色彩に誰しもが感じるものがあるに違いない。しかし、お墓の中でも最も素晴らしいらしいネフェルタリの墓は閉鎖中。ガイドなどでは修復のため「一時的」に、となっていたが、我々のベテランガイドは、チケット争奪戦が加熱しすぎて暴力沙汰になったのをきっかけに「永遠に」閉鎖されたと言っていた。どこかに申請して3000$だかを払わないと入れないのだそうな(しかし JTB など、ツアーによっては入れる模様)。
貴族の墓
東岸
カルナック神殿のレリーフで埋め尽くされた遺跡の規模に圧倒された。エジプトでひとつ何かを見るならピラミッド・・・と思っていたが、本当はこっちを見るべきだった。私の中で、遺跡の横綱 西:カルナック 東:アンコールワット に決定。夕方に行くと日の色が壁に映えてなお美しい。日が沈んでも壁が冬なのに?!と思わせる量の放射熱を出していた。
ルクソール神殿は夜のライティングが美しかった。スフィンクスに挟まれた道が 100mほど続いているのだが、これが昔は車で5分はかかるカルナック神殿までつながっていたというから驚く。
どちらの神殿にも、チップ目当てにガイドを押し売りしてくる人が多い。ある人は、どんな言い伝えがあるのかわからないが、神聖ポイントらしきものを教えてくれて、ここでお祈りをしろ、みたいなことを伝えてきた。興味をそそられるところもあるが、下心が露骨過ぎるし。あまりにたくさんいるのでだんだんウザく感じられてくる。せっかく個人旅行で来ているのだから自分のペースで見たい。
西日を集めるカルナック神殿
エジプト航空にチケットを買いにいったら、10年ぶりだかで名古屋の友人に日本語で手紙を書きたいので通訳をしてくれと頼まれた。英語で言われた文章を便箋に書いていったのだが、意外や英語の手紙言葉をうまく翻訳するのが難しくて、直訳気味に。「え、お礼にビジネスクラスだなんて、そんなつもりじゃなかったのよ。あ、ちなみに帰国もエジプト航空・・・」なんてことにはならなかった。
- ダハブ ~紅海 ★★
ゲストハウスの情報ノートと旅人の情報により、ダハブが落ち着けてよいという話を聞いたので、紅海はハルガダでダイビングするつもりだったが、ダハブに変更した。日程上、フェリーが出ていないので飛行機でシャルムイルシェイク(本当はここの方がよいダイビング基地なのだが、高級リゾートでテロの恐れもあるのでパス)に飛び、そのままバスを乗り継いでダハブへ。朝ルクソールを出て、昼前には到着。
バス停で声をかけてきた人の宿がそこそこ綺麗でよかったのでそのままチェックインして午後からさっそくダイビング!
しかし、寒い!
リゾートのイメージとは遠く、人々は上着を羽織り(もちろんそれでも半そでの○○人なんかも見れる)、風が万年強くふいて、ビーチ沿いのレストランには波が襲い掛かる。
滞在者もあまりやる気がないようで、皆だらだらしていて、ダイビングに行くのは3人だけだった。シャルムイルシェイクまで行く一泊二日サファリもあったが、誰も行く人がいなくて催行されないという状況。
砂漠と山に海、というシチュエーションが素敵
ダハブでは基本、すべてビーチエントリ。車でポイントへ行く。水温は22度。5mmウェットのツーピースでぎりぎり耐えられるくらい。しかし外は風で寒い寒い。
私の宿のダイビングサービスはとってもひどくて、フランス人のガイド含め、潜った4人の機材にそれぞれ問題があって、予備のタンクでも足りなくてエントリしてから車で取り帰る始末。待っている間の寒いこと。
そして、私のウェイトは8kg。紅海の塩分濃度が濃いからといって、スチールタンクではやりすぎ。5kgくらいでよいはずなのに。重い。なので、潜水後すぐに BCD にエアー入れた・・・ら、あれれ、エアーが止まらなくなって浮上開始。まだ10m潜ってなかったので一度上がって色々いじっていたらなぜか止まった。ガイドに色々サイン送っても、下から潜って来いサインの一点張りなのでおそるおそる潜る。深場で再現したらホースを抜くしかない。ダイビングフィーの安さ(20Euro/1本 機材込)の代償は命の危険か・・・。
そして、30m 地点でガイドと一人の人が何か始めた。先日受けたばかりなのでアドバンスのディープダイブの講習だとわかったのだが、やるならやると最初に説明してほしかった・・・。生き物とかを教えてくれないのは日本式でないだけだろうが、全体的にサービスが悪すぎ。寒さ+サービスが嫌になって二日で紅海ダイブをやめることにした。
小物ならたくさん!
海はというと、ビーチからなのに透明度は20~30mあった。驚き。
水が綺麗な分魚はそれほど多くなくて、地形を楽しむ感じ。先月のモルディブのエキサイティングさはなく、癒し系。ダハブのNo1ポイントであるブルーホールには夏はイルカが頻繁に来てずっと遊んでくれるらしい。今回はほろ苦い感じのダイビングになってしまったが、また夏にサービス選んで再チャレンジできたらと思う。
ダイビングポイントにあったお店のオーナーに、夜に一緒に地元の食事に行かないかと誘われた。OK して約束して帰ってきたものの、悪意あっておかしなことにならないか若干心配になる。宿の従業員に相談してみたら「わかんない」というスタンスだったので、リスクと考えて迎えに来てくれ彼に謝って断ることとした。
楽園とさえ言われるダハブであるが、物価、気候、食べ物、景色など、エジプトの中ではよくても、アジアの南の島などと比べてよいとはあまり思えなかった。冬で寒かったというのはもちろんあるだろうけれど。
- シナイ山 ~St.カトリーヌ ★★★★★
モーゼが十戒を受けたというシナイ山。ここには夜に街を出て夜中に山に登り、ご来光を拝み、朝に山を降りて(12時に閉まる)、St.カトリーヌ寺院に行くのが定番。
寺院の開いている時期や客の集まりによってツアーは毎日は出ていないのだが、ダイビングをしたその夜発には減圧症対策で乗れず、次の日の夜は出ていない(あったとしても、夜までダハブで時間をつぶす方法がもう見つからなかった)ので、朝発のツアーに半額で片道だけ乗っけてもらうことにした。公共バスは安いのだが出たり出なかったりだし、St.カトリーヌ寺院が開いている時間に到着しない。つるつるした岩肌の山と若干硬い感じの砂漠。荒野というイメージそのものの世界を2時間強行くとたどり着く。
テロ対策で、St.カトリーヌ寺院に行くにはいくつかのチェックポイントがあり、セキュリティチェックも行われる。最寄の街から寺院までは歩いて30分近くかかる場所にあり、宗教的な生活をおくるのに適した場所になっている。
山々に囲まれてある聖カトリーヌ寺院
寺院ではモーゼゆかりの場所が幾つかあるのを見る。その後昼ごはんを食べ、山に登る。90分ほどの道のりであるが、行きだけラクダに乗ってみることにした。ラクダに当たり外れもあるが、歩いたほうが早い。お尻が痛むし、写真撮ったりしにくいし、乗らなければよかった。最後のほうは歩き。入りまであと30分といったところで頂上についたのだが、驚くほど人が少ない。ガイドには X'mas 周辺はすごい人だとあったが、今日はまさに X'mas イブ。皆、ご来光を見るのだろうか。
標高 2600mはさすがに寒い。靴用も含めカイロをたくさん持ってきたのが役に立つ。頂上で出会ったドイツ人が寒がっていたのであげたら喜んで「下では半袖の人とかがいてびっくりしちゃった」と言っていた。「あ~、それはイギリス人かアメリカ人だね」などと言って笑ったのだが、もし相手がアメリカ人だったら「あ~、それはドイツ人だね」と間違いなく言っていただろうと思う。国籍で人を判断してはいけませんよ!
山頂では宿泊ができた。ここで静寂の中、満点の星を眺め、人々と語らい、ご来光を拝むというのは実に素敵なことだろうと思う。安く、予約はいらない模様。またいつか来たときにはぜひ泊まってゆきたい。
シナイ山頂より、夕暮れと日の入り
ご来光後、西を背に山を下ったのだが、予想以上に暗くなるのが早い。月もなく、真の暗闇に近づいていくくだり道。周囲に下山する人も見えない。道は比較的わかりやすいとはいえ、ミニ電球を持っていなかったらかなり危なかった。自然をなめてはいけなかった。危険な足元からふと視線をあげると、怖いくらいの数の星が空を覆っていた。
今日は X'masイブ。旧約といえど聖書の舞台となる場所で過ごすのは素敵だと、宿は寺院付属のところにとる。とはいえ、予想に反してエアコン完備のこぎれいなホテルといった感じである。2食つきだが値段も高い。昔は簡素な宿泊施設だったのだが、ミレニアムに大改築されたらしい。快適すぎてちょっとつまらない。
観光地といえど夜は人の気配もなく、怖いくらいに静かである。閉ざされた修道院の中ではおそらく何かが行われているのかもしれないが、X'masイブといっても何もイベントはないようである。
しかし、Silent night 静寂は時に心に声を響かせる。不毛の山々に囲まれて満点の星を眺めていると、大いなる何かに想いを馳せざるをえない。ここでならば、モーゼが体験した神話が真実になる可能性があるのではないかという気になる。熱力学第一法則を知らなかった子供の頃と同じくらいの信心で。